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ヘリオス酒造の歴史 ― 太陽とともに歩む沖縄の酒文化

序章:太陽の名を冠した酒造り

沖縄の玄関口・那覇から北へと車を走らせると、美しい海岸線と緑深い山々に囲まれた名護市に辿り着きます。そこにあるのが「ヘリオス酒造」。
いまでは観光地としても知られる酒造ですが、その歩みは決して平坦なものではありませんでした。

社名の「Helios(ヘリオス)」は、ギリシャ神話に登場する太陽神の名。南国・沖縄の太陽の恵みを受け、人々を明るく照らす存在でありたいという願いが込められています。まさに“太陽とともに歩む酒造り”が、ヘリオス酒造の原点なのです。


第1章:ラム酒から始まった物語(1961〜1960年代)

戦後沖縄とサトウキビの豊かさ

1961年、創業者の松田正は那覇市にて「太陽醸造」を設立しました。
戦後の沖縄において、サトウキビは重要な資源でした。製糖業と深く結びつき、島の経済を支える存在だったのです。松田はそのサトウキビを活かしてラム酒を製造することを決意します。

南国特有の甘やかな香りをもつラムは、アメリカ統治下の沖縄で外国人にも人気が高く、観光客にも珍しいお酒として注目を集めました。

ウイスキーへの挑戦

1963年、ヘリオスはラムだけに留まらず、ウイスキー製造にも乗り出します。
まだ日本国内でのウイスキー需要が高まり始める時代。洋酒文化を取り入れた酒造りは先進的であり、「沖縄から世界に通じる酒を造る」というビジョンの表れでした。

そして1969年には社名を「ヘリオス酒造株式会社」と改め、より大きな展望を抱く企業として再出発します。


第2章:名護への移転と新たな挑戦(1970〜1980年代)

名護という地を選んだ理由

1972年、本社と工場を現在の名護市許田に移転。
なぜ名護が選ばれたのか?それは豊かな自然環境にあります。山から湧き出る水、亜熱帯気候の湿度と温度、そしてサトウキビ畑に囲まれた土地。酒造りに欠かせない条件が揃っていたのです。

ハブ酒の誕生と沖縄土産としての定着

同年にはリキュール免許を取得し、ユニークな「ハブ酒」の製造を開始。瓶の中にハブが沈んだ姿はインパクト抜群で、沖縄観光の象徴的なお土産として人気を集めました。薬草やハーブをブレンドし、健康酒としての価値も訴求したことで、観光客に「沖縄らしい一品」として浸透しました。

泡盛製造への参入

1979年には焼酎乙類免許を取得し、ついに沖縄伝統の泡盛製造をスタート。
地元文化を尊重しながら、洋酒製造で培った技術を応用するという独自の姿勢がここに表れています。沖縄の伝統と革新が交わる瞬間でした。


第3章:古酒「くら」の誕生(1990年代)

樽熟成の技術を泡盛へ

1991年、ヘリオス酒造は画期的な泡盛を世に送り出します。それが「古酒くら」です。
洋酒事業で培ったオーク樽熟成の技術を泡盛に応用したことで、まろやかで芳醇な味わいが誕生しました。伝統的な甕熟成とは異なる魅力が加わり、泡盛に新しい可能性を示した瞬間です。

全国へ、そして世界へ

「くら」は沖縄土産の定番として広まり、国内外の品評会でも数々の賞を受賞しました。1993年には「古酒蔵」を建設し、安定した貯蔵環境を整えます。泡盛を世界的ブランドへと押し上げる基盤が築かれたのです。


第4章:沖縄初のクラフトビール(1996年〜)

新しい酒文化の創造

1996年、ヘリオス酒造は沖縄で初めてクラフトビールの製造免許を取得しました。具志頭村に工場を建設し、「青い空と海のビール」をはじめとする多彩なビールを醸造。

当時の沖縄にはまだ「地ビール文化」が根付いておらず、ヘリオスの挑戦は先駆けでした。ブルワリーレストラン「ヘリオスブルワリー」や「ヘリオスパブ」をオープンし、地元と観光客が集う場所を作り出しました。

観光体験としてのビール

沖縄旅行で「現地で作られたビールを飲む」という体験は、観光の大きな魅力となりました。青い空と海を思わせる爽やかな味わいは、まさに沖縄の自然そのもの。ビールを通じて、沖縄の空気をそのまま味わうことができるのです。


第5章:多角化と健康志向(2000年代)

2000年代、ヘリオスは泡盛やビールだけでなく、紅芋焼酎やワイン、健康飲料「もろみ酢」にも挑戦します。

「もろみ酢」は泡盛製造の副産物として生まれたもろみから作られる健康酢で、黒麹由来のクエン酸を豊富に含み、健康志向の観光客や地元の人々に支持されました。

沖縄の伝統食文化と現代の健康ニーズを結びつけた商品は、観光客にとって「旅の思い出」と「日常の健康習慣」を繋ぐ役割を果たしました。


第6章:世界へ広がるヘリオス(2010年代〜現在)

台湾進出とグローバル展開

2011年、台湾に現地法人を設立。沖縄と台湾は歴史的にも文化的にも交流が深く、輸出だけでなく現地展開を行うことで「沖縄のお酒をアジアに広める」活動が加速しました。

日本各地との連携

2020年には岩手県沢内の醸造所を取得。沖縄の枠を超えて、日本全国の地域と連携しながら多様なお酒を生み出す体制が整っています。


第7章:受賞の軌跡

ヘリオス酒造の歴史は、数々の受賞の歴史でもあります。1989年の泡盛品評会優等賞を皮切りに、モンドセレクションで「古酒くら」が毎年のように金賞や最高金賞を獲得。

クラフトビール「青い空と海のビール」や健康飲料「黒麹もろみ酢」も国際的な評価を受けました。
これは単なる製品評価ではなく、「沖縄の自然・文化を世界に伝える取り組み」が認められた結果だといえます。


終章:太陽とともに未来へ

1961年、那覇の小さな醸造所から始まったヘリオス酒造は、60年以上の時を経て、泡盛・ラム・ウイスキー・クラフトビール・健康飲料を展開する総合酒造メーカーへと成長しました。

観光客にとって、ヘリオス酒造を訪れることは「お酒を味わう」だけでなく「沖縄の歴史と文化を体験する」旅でもあります。
これからも太陽の恵みを受けながら、ヘリオス酒造は新しい挑戦を続け、沖縄から世界へと光を放ち続けることでしょう。